4ヶ月で人事・勤怠・給与データを統合。経営の問いに組織全体で答える、データ起点の「人的資本経営」へ
4ヶ月で人事・勤怠・給与データを統合。経営の問いに組織全体で答える、データ起点の「人的資本経営」へ
エグゼクティブサマリー
1. 導入前の課題:経営の問いに、組織全体で答えられる基盤がなかった
亀田製菓様では以前、経営層から人事データに関する問いが寄せられるたびに、複数のシステムからデータを抽出し、組み替えて集計する必要がありました。集計はその場限りのものとなり、次の問いには活かしづらい状態でした。経営から寄せられる問いの数と速度に、既存のシステム構成が追いついていない、という状況が続いていました。
その背景には、仕組みの設計思想の違いがありました。亀田製菓様には以前からタレントマネジメントシステムが導入されており、一人ひとりの情報を管理する基盤は整っていました。一方で、経営層から寄せられる問いの多くは「組織全体として、どの層で何が起きているのか」という俯瞰の問いです。個人を精緻に捉える「虫の目」の仕組みと、組織全体を見渡す「鳥の目」の仕組みは、設計思想が異なります。個人単位の情報が整っていることと、組織単位の問いに答えられることは、同じではありませんでした。
タレントマネジメントと、パナリット
タレントマネジメントは、個人を管理し育てるための仕組みです。一方、パナリットは、組織全体で何が起きているかを問い、経営の意思決定に接続する仕組みです。亀田製菓様は前者を置き換えたのではなく、後者を新たに獲得されました。二つが揃うことで、組織全体を俯瞰して「どの層で何が起きているか」を特定し、そこから一人ひとりの情報へ降りて打ち手を実行できます。発見から実行までが、一本の線でつながります。
また、亀田製菓様では事業の付加価値を高めていく方針のもと、人的資本への投資が収益にどう貢献しているかを可視化する必要がありました。しかし、人事データと財務データがそれぞれ別のシステムや粒度で管理されており、組織単位での生産性を定量的に把握することが困難でした。
さらに、グループ全体としての戦略(ONE KAMEDA)を推進する上で、各社間でシステムやフォーマットが統一されておらず、横断的な人事戦略を語るための基盤が存在していませんでした。
2. プロジェクトの進行:約4ヶ月での迅速なデータ統合を実現した両社の相乗効果
データ統合は、両社で進む3つのステップ
データ統合は、パナリットが一方的に進める作業ではありません。定義のすり合わせから実装まで、各ステップで導入企業側のご判断が必要になります。亀田製菓様とのプロジェクトも、次の3つのステップで進みました。
- 指標の定義をすり合わせる
パナリットがあらかじめ設計している計算式に対し、亀田製菓様の定義と合致しているかをご確認いただきました。これまでどの計算式で運用してこられたのか、求める最適解はどれか。開示が求められる人事指標は、精緻な計算式が一律に定められているとは限らず、企業内でも「過去からの踏襲」で独自のロジックが運用され続けているケースが少なくありません。このステップは、既存の計算ロジックを見直し、より信頼度の高い数字を構築する機会にもなります。 - 亀田製菓様のデータをパナリットの項目に紐づける
既存のシステムから出力されるデータが、パナリットのどの項目に当たるのかを、亀田製菓様とパナリットで突き合わせて紐づけていきました。 - イレギュラーケースの対応方針を検討し、ロジックを決める
実装を進める中では、想定したロジックに収まらない値や、社内独自の運用が見つかります。その際は、どのような運用になっているかという事実をパナリットから亀田製菓様に確認し、過去の導入で蓄積したノウハウをもとに対応方針をご提案しました。その内容を亀田製菓様にご判断いただいたうえでロジックを確定させ、指標として可視化していきました。
リードタイムを決めるのは、自社のデータ理解と判断の速さ
各ステップでは、データのご準備、導入企業側のデータ理解、イレギュラーケースの検討と意思決定が求められます。この一つひとつが早いことが、そのままリードタイムの短縮につながります。亀田製菓様は、この点が際立っていました。
パナリットが持つ「指標の型とノウハウ」と、亀田製菓様が持つ「自社データへの深い理解と、意思決定の速さ」。この2つが噛み合ったことが、オンボーディングを約4ヶ月で完了させた最大の要因です。
3. 導入成果とインサイトの抽出
オンボーディング完了直後、整えられたデータ基盤を活用し、3つのPeople Questionを設定。その分析結果を、パナリットから亀田製菓様の経営層へ提示しました。
- 離職:どの層で、いつ、なぜ人が抜けているか
- 長時間労働の常態化:基準超過者の組織ごとの分布
- 女性管理職登用:2030年の比率30%目標に向けたパイプラインの課題
いずれも単年度のデータによる初回の分析ですが、以下の示唆が得られました。
- 離職は「全社の平均」ではなく、職種と勤続年数の重なりに現れた
全社の離職率そのものは低い水準にある一方、特定の職種と、特定の勤続年数帯の重なりに偏りが見られました。議論はその場で「なぜその時期に集中するのか」へ移り、次に検証すべき問いが具体的に定まりました。 - 長時間労働は「部署」ではなく「役割」に紐づいていた
部署単位で見ると大きな偏りは見えない一方、役割単位で捉え直すと、特定の役割に集中していることが分かりました。 - 女性管理職は「入口」ではなく「途中の移行」が論点だった
採用時点の男女比に大きな差はなく、課題は専門職トラックから管理職トラックへの移行にありました。2030年に30%という目標に対し、「採用を増やすのか、育成の設計を変えるのか」という、打ち手の問いの立て方そのものが変わりました。
データ基盤が整っていれば、最初の分析の時点で「次にどのデータを見るべきか」という具体的な議論に入ることができます。実際にこの場では、仮説の検証に必要な追加データの特定まで進みました。
パナリットは、既存のシステムに散らばっていたデータをひとつにつなぎ、整え、指標として生成・可視化します。その土台があってはじめて、実行可能なインサイトを取り出すことができます。
4. 今後の展開:人件費を「コスト」から「いくらの利益を生んだ資本か」へ昇華
亀田製菓様が次にフォーカスされるテーマは、生産性です。
亀田製菓様において、これまで人への投資は「どこにいくらかかっているか」までは見えていても、それがどれだけ利益に跳ね返ったのかは検証が困難でした。財務データと人事データの接続によって、「人件費1円は、いくらの貢献利益を生んだのか。それは組織によってどれだけ違うのか」「計画に届かなかったとき、原因は人数か、生産性か、配置か」といった問いに答えられるようになります。
さらに、亀田製菓様は「ONE KAMEDA」を支えるデータ基盤の構築を、グループ各社へと広げていかれます。各社でシステムやフォーマットが異なるため、まず1社をモデルケースとして導入し、順次拡大していく計画です。
経営の問いに、組織全体で答えられる基盤は整いました。亀田製菓様は次に、その基盤の上で人と利益を同じ数字で語る段階に入ります。
これまでも個人単位の人材情報は管理できていましたが、経営層から求められる「組織全体で何が起きているのか」「人的投資が事業成果にどう結び付いているのか」といった問いに、迅速に答えられる環境ではありませんでした。人的資本経営やグループ経営をさらに推進するため、データを統合し、経営判断に活用できる基盤づくりが必要だと考えていたところ、パナリット様との出会いがありました。
約4カ月で人事・勤怠・給与データの統合を実現し、離職や長時間労働、女性管理職登用といったテーマについて、データに基づく分析を進めています。これまで感覚的だった議論が事実に基づくものとなり、課題の所在や次に検証すべきポイントが明確になってきていることを大きな成果と感じています。
今後は人事データと財務データをつなぎ、人的投資がどのような価値や利益を生み出しているのかを可視化していきたいと考えています。また、今回構築した基盤をグループ各社へ展開し、「ONE KAMEDA」を支える共通の人的資本経営基盤として発展させていきたいと考えています。