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転居を伴う異動は、本当にマイナスなのか。村田製作所様が7年分の人事データで確かめた「異動の実像」

2026-10-27
転居を伴う異動は、本当にマイナスなのか。村田製作所様が7年分の人事データで確かめた「異動の実像」

転居を伴う異動は、本当にマイナスなのか。村田製作所様が7年分の人事データで確かめた「異動の実像」

事例紹介|パナリット × 株式会社村田製作所様
この事例のポイント
  • 検証したテーマ:転居を伴う異動を行った従業員は抵抗を感じているのか。転居を伴う異動は、その後のキャリアや働き方に影響しているのか。
  • 使ったデータ:人事基幹システムにある従業員・給与・勤怠・評価のデータと、異動発令のデータ
  • わかったこと:離職・考課改善・基本給の伸び・傷病休職の4つの指標で、転居を伴う異動が悪い結果につながる証拠は見つからなかった
  • 次の一手:「全員を一律に心配する」から「データで注意を向ける対象を絞る」へ。次に確かめるべき論点と、その検証に必要なデータまで特定した

人事AIアナリスト「パナリット」を提供するパナリット株式会社は、株式会社村田製作所様と「異動と転居に関する人材データ分析」に取り組み、2026年10月に最終報告を行いました。社内で語られてきた異動への不安を、7年分の人事データで一つずつ確かめたプロジェクトです。

エグゼクティブサマリー

課題

村田製作所様ではすでに人事ダッシュボードを整え、人材の状況を「見る」環境がありました。一方、転居を伴う異動については社内でさまざまな声があり、「忌避感は本当にあるのか」「異動した人のその後は悪くなっているのか」を確かめる手段がこれまでありませんでした。事業を支える人材の流動性と、従業員への配慮。その間で判断するための事実確認が求められていました。

成果

パナリットは人事基幹システムのデータと異動発令をつなぎ、テーマを検証できる問いに分けて7年分のデータを分析しました。年度・職掌・年代・異動前の考課の違いをそろえて比べると、離職・考課改善・基本給の伸び・傷病休職の4つの指標で、転居を伴う異動が悪い結果につながる証拠は見つかりませんでした。今の異動のあり方を続けてよいという判断の根拠と、注意を向けるべきケースの特定が、同時に得られました。

今後の展開

分析の最後には、今のデータで言えることと言えないことを分け、次に確かめる論点とそのために要るデータまで整理しました。今後は、転居の経験が能力の伸長や早期の育成にどう効くのか、エンゲージメントサーベイと組み合わせて注意が必要な方を早めに見つけられるか、といった問いへ検証を広げていきます。

「課題感はある。でも、確かめられていない」からの出発

パナリットには、お客様の状況に合わせた3つの入り口があります。まだ何を問うべきか見えていない段階で問いを発掘する入り口、テーマはあるが原因と打ち手が見えない段階で課題感を深掘りする入り口、そして知りたい数字が決まっていて、その動向を確かめる入り口です。

今回の村田製作所様の取り組みは、2つ目の「課題感を深掘りする」にあたります。「転居を伴う異動に、従業員は抵抗を感じているのではないか」というテーマははっきりしていました。足りなかったのは、それを確かめるための問いの立て方と、データの整え方でした。

図1:パナリットの3つの入り口と、本事例の位置づけ
図1:パナリットの3つの入り口と、本事例の位置づけ

「見える」だけでは答えられない問いがあった

村田製作所様では、2025年から社内で人事ダッシュボードを構築し、人材に関するさまざまな情報を確認できる環境が整っていました。

ところが、異動について社内で聞こえてくる問いは、ダッシュボードの数字だけでは答えられないものでした。異動者数や属性別の状況は、ある時点のスナップショットとしては見られます。しかし「異動を経験した人は、その後どうなっているのか」「転居を伴う異動は、離職やキャリアに影響しているのか」に答えるには、一人ひとりの異動の前後を時間の流れで追い、比べる相手を正しくそろえる必要があります。

「スナップショットで見るところにとどまっていて、データを“流れ”として捉えて分析するところまでは十分にできていませんでした」(渡部 正人 様)

「忌避感は本当にあるのか」を、検証できる問いに分ける

「異動への忌避感」は、人事データのどこにも直接は記録されていません。そこでパナリットは、テーマをそのまま分析するのではなく、データで答えが出せる問いに分けることから始めました。パナリットでは、こうした問いをPQ(People Questions)と呼び、200以上の「組織によくある人事の問い」をライブラリーとして蓄えています。

今回は、村田製作所様の皆さまが抱いていた問題意識を一つずつ聞き取り、たとえば次のような問いに置き換えました。

  • 転居を伴う異動への忌避感は、実在するのか。実在するなら、誰にどう表れているのか
  • 転居を伴う異動の後、離職や考課、処遇は悪くなっているのか
  • 異動は、一部の人に偏っていないか
  • 転居を伴う異動の後、元の拠点に戻れているのか

忌避感のように直接測れないものは、行動に表れる「兆し」から確かめます。たとえば本人の希望による異動の推移や、転居を伴う異動の割合の変化です。結果は、社内で語られてきた見方を裏づけるものもあれば、仮説と異なるものもありました。

つなぐのは、社内にすでに蓄積されている人事システムのデータだけ

今回使ったのは、人事基幹システムにある従業員・給与・勤怠・評価のデータと、異動発令のデータです。新しいサーベイの実施や、現場への入力依頼はありません。

ただし、基幹システムのデータは、そのままでは分析に使えません。データをつないだ後、分析できる形に整えるデータクレンジングは全てパナリットが担いました。

  • 数万件の異動発令に関するテキスト情報をクラスタリングし、異動の種類と事由を整理
  • 発令ごとに、転居を伴うかどうかを判定
  • 組織改定や休職に伴う異動など、本人の動きではない発令を除外
  • 百種類以上ある役職名を、分析できる役職グループに統合
  • 事業所コードをたどり、元の拠点に戻ったかどうかを判定
  • 年度・職掌・年代・異動前の考課をそろえ、「同じ条件の人なら本来どうなるはずか」という比較の物差しを作成

こうして整えたデータに対して、AIがPQライブラリーから検証にふさわしい問いを選び、分析の結果を図と示唆にまとめます。データの整備から問いの選定、検証、示唆までを一続きで進められるのが、人事AIアナリスト「パナリット」の特長です。

図2:お客様の作業はデータの接続だけで、整備から問いの選定、示唆までをパナリットが担う
図2:お客様の作業はデータの接続だけで、整備から問いの選定、示唆までをパナリットが担う

わかったこと:「転居を伴う異動で悪くなる」証拠は見つからなかった

転居を伴う異動を経験した方と、そうでない方を比べるとき、そのまま比べると判断を誤ります。異動する方の年代や職掌、異動前の考課は、異動しない方と違うからです。

そこで今回は、年度・職掌・年代・異動前の考課の違いをそろえて比べました。すると、離職・考課改善・基本給の伸び・傷病休職の4つの指標で、転居を伴う異動の後に結果が悪くなるという証拠は見つかりませんでした。見えていた差の多くは、こうした構成の違いで説明できるものだったのです。

これは「転居を伴う異動は、まったく気にしなくてよい」という結論ではありません。データによって、何を心配すべきで、何は心配しすぎなくてよいのかを切り分けられた。そこに、この分析の価値があります。

一律の配慮から、データで的を絞ったケアへ

分析からは、異動そのものを減らすべきだという結論ではなく、「どのようなケースに、より注意を向けるべきか」という次の問いが見えてきました。たとえば、短い期間に何度も異動を経験した方などは、追加で確かめるべきケースとして浮かび上がりました。

大切にしたのは、課題によっては今得られた分析結果だけで結論を出さないことです。内容によっては、「次に何のデータを見れば、より確かな判断ができるのか」まで示しました。たとえば、異動後に元の拠点へ戻っていないのが本人の希望によるものなのか、戻る機会がないためなのかを知るには、本人の勤務地の希望といった情報が必要になります。

「何が起きているか」を確かめるだけでなく、「次に何を確かめるべきか」までデータから導き出す。その積み重ねが、組織への理解の解像度を上げ、ピープルアナリティクスを社内に根づかせていくと考えています。

届くのは、経営・人事の議論にそのまま使えるレポート

パナリットの最終報告は、1ページに1つのメッセージを置く形式です。見出しを読めば結論がわかり、図・注記・出典をたどれば根拠を確かめられます。全体像から始まり、問題意識ごとの検証結果、そして示唆と次に確かめる論点へと進む構成なので、そのまま経営や人事の会議で議論の材料として使えます。

問題意識ごとに「事実だったもの」「仮説と異なったもの」「今のデータでは判断できないもの」を分けて示すのも特長です。分析の結果を、次の判断と行動につなげやすくしています。

図3:納品されるレポートの形式(見本)。数値・グラフ・文言はすべてダミーです
図3:納品されるレポートの形式(見本)。数値・グラフ・文言はすべてダミーです

従業員の不安に、事実(データ)を元に向き合う

転居を伴う異動については、「転居したら元の拠点に戻ってこられなくなるのではないか」「異動で負担が増えるのではないか」といった不安の声が、従業員から寄せられることも少なくありません。

こうした声に、制度の意図や人事の考え方を説明するだけでなく、実際のデータでわかったことを示せれば、対話は変わります。今回の分析では、転居後に元の拠点へ戻るまでの期間や割合を年代別に確かめ、漠然とした不安に対して、データで確認できたことと、引き続き確かめるべきことを分けて伝えられるようになりました。

データがあることで、人事は制度を説明するだけでなく、事実を共有しながら従業員の不安に向き合うことができます。今回得られたエビデンスは、今後の異動施策を考える際の判断材料であると同時に、従業員との相互理解を深めるコミュニケーションにも活かせます。

今後の展開:問いを深め、次の意思決定へ

今回の分析で整理した次の論点をもとに、さらなる仮説検証へと広げていくことが期待できます。転居の経験は能力の伸長や早期の育成に効くのか。エンゲージメントサーベイと組み合わせて、注意が必要な方を早めに見つけられるか。一つの問いに答えが出ると、次に確かめるべき問いが見えてきます。

パナリットが提供するのは、単なるデータ分析やレポート作成ではありません。人事の問題意識を検証できる問いに変え、データから得た事実と示唆を、次の判断につなげること。それが、パナリットの「Insight as a Service(データ連携から分析・洞察の提供までを一気通貫で実現するサービス)」です。

同じような問いをお持ちの人事の皆さまへ

「人事課題やその影響を、データで確かめたい」「課題感はあるが、どこから分析すればよいかわからない」。そうしたお悩みをお持ちでしたら、お気軽にご相談ください。お手元の人事データをつなぐところから、問いの設計、検証、示唆まで伴走します。

お客様の声
株式会社村田製作所 管理本部 人事統括部 人事部 人事IT推進課 シニアマネージャー 渡部正人様

これまでも社内の人事ダッシュボードで情報を見ることはできていましたが、スナップショットで見るところにとどまっていて、例えば異動や昇級率など、データを“流れ”として捉えて分析するところまでは十分にできていませんでした。今回、こちらの問題意識をもとにデータを分析し、そこから示唆まで出していただけたことは、非常に心強く感じています。

今回の分析では、人事異動について社内でさまざまな声があった中で、実際の状況をデータで確認することができました。今後の人事異動を考えていくうえでも、有用なインサイトだったと感じています。また、データによるエビデンスがあることで、社内の意思決定だけでなく、従業員に対して施策の背景や考え方を説明する際にも、幅広く活用できそうだと感じています。

ピープルアナリティクスの重要性や、その活用については、社内でもまだ認識がさまざまなところがあります。その中で、今回の取り組みを通じて、実際のデータを見ながら議論し、考える機会を持てたこと自体が、データに対する意識や向き合い方を変えていく一つのきっかけになったのではないかと思っています。

今回の取り組みを通じて、小川さん、トランさんをはじめとするパナリットの皆さんとは、今後も何か面白いことができそうだという感覚を持っています。今後も、さまざまな可能性について協議できればと思っています。