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人事は絶対に知っておくべき離職率の定義の話。

2021-07-02
人事は絶対に知っておくべき離職率の定義の話。

離職率とは、会社を辞めた人がどれくらいいるか、を示すものです。一見簡単に理解できそうなこの指標ですが、実は大きな誤解や判断ミスをうむ危険性を孕んでいます。一方で正しい理解のもとで利用すれば、企業の意思決定に大いに役立つ指標です。今回は、この「薬」のような離職率について、ピープルアナリティクスを進める上での実用的な事例も踏まえながらパナリット・ジャパンのトランが解説します。

(ライター紹介)

Chi Tran

新卒でBCGに入社後、Recruit Holdings、Googleなどで、新規事業開発・DX(デジタル・トランスフォーメーション)・組織の意思決定支援システムに関わるコンサルティングや事業/ 営業推進に従事。Recruitでは最年少幹部候補、GoogleではAPACでのベスト5 コーチに任命

目次

  • 離職率の定義について
  • 年換算離職率とは

離職率の定義について

離職率について話すにあたってまず、そもそも離職率の計算方法や定義は公表主体によってバラバラであることを理解しなければなりません。離職率の算出には法定で決められたものが無く、仮に離職率0%を謳っている企業があったとしても、どのくらいの期間、どのような定義で計算したかがポイントになります。特に離職率は、年度末の振り返りだけでなく、毎四半期ないし毎月定点観察すべき指標ですが、後で検証するように計算手法によっては過小(過大)評価するリスクが伴います。

厚生労働省の定義では、

であると発表されています。

しかし、私たち(パナリット)としては上述の定義にはいくつかの問題点、デメリットがあると考えています。例を元に考えていきましょう。

ある企業の1年間の退社と入社の人数

ケース 1

ケース 1 は、4 月 1 日時点で社員数1,000 人、表の通りの人の出入りがあり、年間を通じて4-7月と同じペースで入社と退職が起きたと想定したシミュレーションです。

まず分母に関してですが、上記の厚生労働省の定義では

・初日以外に入社した人がカウントされない

・期間中の社員の増減が加味されない

という問題があります。

そのため計算式の分母は、対象期間中の、各月の月初と月末時点での従業員数の平均を取るべきです。

表中の離職率A、B、Cの分母はそれぞれ

であり、分子はいずれも期間中の退職者数の合計です。この中では離職率Cが上記の問題をクリアし、最も確からしい離職率を表していることになります。

さて、このようなケースのとき、4-7月の離職率が何%か? という問いに対して、離職率Aでは 10.0 % 、Bでは 9.8 % 、Cでは 9.6 % となります。

では 9.9 % という数値は、組織の状態を正しく捉えているのでしょうか。

該当期間中、組織の全体規模に対してどれぐらいの人が辞めていったかを知るのは重要ですが、更に重要なのは「もしこのペースで人が辞めていったら、年(年度)の終わりにはどういう状態になっているのか?」であり、更には「もし離職率が問題なら、どうやって改善すれば良いのか?」ということです。

ここで 7 月の時点で定義Aに基づいて、「退職率が10%程度なのだから、8 月以降は 2 % pt改善すればOK(離職率 8 %を目指す)」と思って施策を打ったとしましょう。

見事施策が効果を発揮し、各月で 2 %ずつ退職者が減ったとします。 (ケース 2 )

ケース 2 

しかし、4 – 11 月は 17.8 % 、4-3 月は 25.0 % とどんどん増えていってしまいました。

もう一度ケース 1 を見ると、年度末までに 300 名が退職していることになるため、既存社員+期中の入社者を合わせて約3割の人材を失うことになります。つまり、年間の離職率は実は 30 % 程度ありました。

離職率が 30 % の時と 10 % の時では、当然ながら改善施策の規模も内容も大きく異なります。ケース 2 のように、離職率Aの値を鵜呑みにして 10 % という数値に基づいて対策を打ってしまっては、年度末に大きな改善は見られないのです。

つまり、離職率の実情を捉えるにはは年間単位で考えることが必要であり、また組織の要員計画は通常 1 年単位で行われ、離職の改善施策も効果が現れるまでには通常何ヶ月もかかるものです。そのため、期間中の離職率は「年換算したらどうなるのか?」で判断すべきであり、そうでないと上記の例のように影響度を過小評価してしまうことになります。

したがって、私たちは年換算離職率を推奨しています。次はこの年換算離職率について解説します。

( 参考までにケース 3 では、万が一 8 月以降に退職がぴたっと止まった場合のシミュレーションです。このシナリオの時は、7 月時点での退職率が 9.6 %という数値はもっともらしく見えますが、実際にはケースCのようなシナリオは起こりにくいと考えるべきです。)

ケース  3 年換算離職率とは

年換算離職率(Annualized Turnover)とは、任意の期間の離職状況を 1 年間の値に直したものです。

年換算離職率は、

で表されます。

先ほどのケース 1 での年間離職率は下記のようになります。4 – 7 月は一年の 3 分の 1 なので値を 3 倍したもの、4 – 11 月では 1.5 倍したものです。年間を通して値が安定していることがみて取れます。

ケース 1 (年換算離職率)

この年換算離職率を用いて月ごとや週ごとの比較をするのは有効です。重要なインサイトに気づけるかもしれません。

例えば、5月に離職が集中しているのをみて、組織として 5 月病に弱い、という仮説のもと 5 月に面談の回数を増やす、といった分析と施策が打てたりします。(あくまで一例ですが)

なお年換算離職率を用いると、値が100%を超えることがあります。

例えばケース 4 では、4月の平均従業員数102名に対して離職者が12人いたため、年換算の離職率は 12÷102 × 12 ≒ 141.2 % となります。これは「今の従業員規模・ペースで離職が進んでいくと、1年も経たないうちに組織から全員いなくなりますよ」ということを示唆しています。実際に、5月以降も毎月12名が離職するとシミュレーションすると、12月時点で組織がなくなってしまうことが分かります。

ケース 4 

離職率の算出方法について、お分かりになっていただけたでしょうか。さて、本当に大事なのはここから、つまり得られたデータをどのように生かし、実益に繋げるか、ということです。次回は、離職率の解像度をさらに上げるには、という観点で、離職率というデータの見るべきポイントと考え方について解説します。後編記事はこちら→

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